
顔色の悪い患者さん。
ここ数日で急に食欲がなくなり、元気がないそうです。
最初、ご家族は認知症をご心配されていました。
眼瞼結膜を見ると真っ白。
これは、まぎれもなく貧血の所見です。
夕方だったので血液検査を緊急で行い
診療終了までお待ち頂いて上部内視鏡検査をしました。
幸い、胃や十二指腸には出血源はありませんでしたが、
血液検査で極度の貧血と血小板の異常低値が確認されました。
血小板が3,000?!
血小板はふつう、15万とか20万が基準値で
10,000以下になることなどめったにありません。
集中治療室で全身管理が必要な病態です。
その日は休日前の夜。
基幹病院に転送の依頼をしましたが、
長く待たされたあげく「満床です」。
そういうこともあるでしょう。
長く待ったのはベッドを何とかしようと
してくれていたのかも知れません。
そう考えて、気を取り直して
不安そうなご家族の前にしながら
今度は隣の区の総合病院に電話をかけました。
「落ち着け」と自分に言い聞かせながら聴こえる
呼び出し音さえ、異様に長く感じます。
やっと救急外来につながり、直接、経過を
お話をさせて頂いて受け入れてもらうことになりました。
ただし、救急車による搬送が条件。
救急要請して、10分後に救急車が到着。
救急隊員に状態を説明して
さらにもう一度、転送搬送依頼書の
「転院搬送の条件」と「転院理由」と「緊急性の有無」と、
同じようなこと何回も記入して、
さあ、出発かと思いきや
なかなか、救急車は走り出しません。
搬送先への確認と言うことですが、
とっくに病院への受け入れは承諾済みですし、
すでに到着してから15分、救急要請してからは、
もう、30分以上も経過しています。
たまりかねて、
「あの、なんで確認に、そんなかかるんですか?」
と、救急隊の方に尋ねると
今、確認取れたので出発しますとのことで
ようやく救急車が動き出したと思ったら、
隊員の方が救急車から降りてきて
「あの、3,000って、何の数字ですか?」
全身の血液が逆流しそうになりながら、
「血小板だと言ったでしょ!
だから緊急の救急要請なんですよ!」と
こちらもついついエキサイトしてしまいます。
満床だった基幹病院も受け入れてくれる総合病院も
もちろん救急隊の方々もみんな、懸命なのですが、
数十分が何時間にも感じました。
急いで、しかし、丁寧に。
診察だけではなく、転院のマネジメントも
特に緊急を要する時こそ、落ち着いて
一層慎重に、そしてかつ、迅速に行わなければなりません。


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