
上気道炎の症状と首のリンパ腺が腫れて
他の病院で抗生物質を処方されていた若い女性の患者さん。
前腕、下腿、そして体幹に発疹、紅斑が出現して
節々が痛くて困るとお母さんと来院されました。
すわ、風しんか!とも心配しましたが、
お母さんの話では幼稚園のときに
集団感染で確かに罹患したそうですし、
年齢的には予防接種を2回されているはず。
そこで、先行する上気道炎、リンパ節の腫れ、
そして、抗生物質服用後の発疹と言うことで、
まず、伝染性単核球症、EBウイルス感染を疑います。
ところが、血液検査をしたところ、
白血球と血小板の低下を認めましたが、
EBウイルスの感染にしては肝機能異常が軽微です。
異型リンパ球も出てはいますが、わずか2.0%。
まだ、EBウイルスの抗体価は
結果が出ていませんがどうもハズレのようです。
さては伝染性紅斑、いわゆる「りんご病」の成人感染かも。
お母さんに伺っても、ほっぺたが真っ赤になった
記憶は定かではありません。怪しい。
ところが、原因ウイルスの
ヒトパルボウイルスB19の抗体の検査は
妊婦じゃないと「健保適用」になりません。
妊婦がヒトパルボウイルスB19に
感染すると胎児の貧血と発育遅滞や
胎児水腫が合併することもあるからですが、
今現在、首のリンパ腺が腫れて
身体の発疹と関節痛で苦しんでいるご本人はもちろん、
ご家族も大変不安な思いであるにもかかわらず
健康保険ではその原因について検査ができません。
そもそも、ヒトパルボウイルスB19はワクチンもなく、
これから妊娠する可能性があるひとも
感染状況を確認しておくのは意義があることです。
かと言って、それを同日に自費で検査することは
いわゆる「混合診療」に抵触します。
ったく、何なんだよ「混合診療」って!
健康保険ではいちいち検査しないで
臨床症状で診断しなさいということなのでしょうが、
「薬局に問い合わせたら薬疹と言われたんです。
薬疹じゃないんですか?!」
と問い詰められても、経過を見なければ即答は出来ません。
こうしてウイルス感染症の診断は
保険診療のジレンマの中で
進めて行かなければならないのです。


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