
C型肝炎の患者さん。
すでにとあるクリニックで
数年間、経過観察をされていましたが、
積極的な治療を望まれて
自分の診療所にいらっしゃいました。
2004年。
折しも、ペグインターフェロンと
リバビリンの併用療法が健保収載され、
難治性と診断された方でも
治癒率が10%程度から40%近くにまで
上がったときです。
大学病院に入院して頂き、
肝生検を行って治療を開始しましたが、
1回目のペグインターフェロンの注射で
白血球が激減してしまって、
治療の継続は断念せざるを得ませんでした。
落胆する患者さんと相談して
半減期の短いインターフェロンを少量から
診療所の外来で再開してみました。
副作用を慎重に警戒しながら、
インターフェロンの種類を変え、少しずつ量を増やして
何とか48週間の注射を完遂しました。
すでに初診から数年の年月が経っていました。
肝機能は落ち着いてきたように見えましたが、
エコーの定期検査で肝臓がんが見つかりました。
この時はまだ初期段階。
大学病院で手術をして成功しました。
しかし、約2年後に再発。
C型肝炎が進行した肝臓は
がんの種をまいた畑のようになっていて
いつどこから発がんしてもおかしくないのです。
その後は、再発したがんの芽を摘み取るように
ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法と集学的治療を重ねました。
経過は思わしくなくがんは次第に血管にも浸潤し、
治療困難な状況になってしまいました。
ご本人や奥さまとは細かく経過をお話して
治療を進めていました。
ご本人からも
「やるだけのことをしてもらったから、
後悔はしていませんよ」とおっしゃって頂いていました。
そんな矢先、遠隔地のお住まいの
ご親族から、突然、「主治医を変える」という
衝撃的なご連絡を頂いてしまいました。
確かに、余命を考えたら
通院も難しいかも知れません。
でも、青天の霹靂でした。
ごく最近、その患者さんが、天の召されたことを
風の便りに知ることが出来ました。
10年以上も治療をしてきて
結局、病気から救うことも出来ず、
最後にお話しすることさえ出来ませんでした。
医者としても無力さを痛感します。
昨年秋からC型肝炎治療の
主流となった経口の抗ウイルス薬。
その眩いばかりの効果を見せつけられて、
これまで、自分たちがしてきたことは
何だったのかと思わないではいられません。


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